7月31日(木)
毎夏、セントラル・パークの中にあるデラコルテ・シアターでは、シェイクスピア・イン・ザ・パークという催しが毎晩8時から行われ、たいがい有名なシェイクスピア劇を一夏で二本、とてもいいプロダクションで、無料で観劇することができます。ただし無料といっても、当日の午後1時にボックス・オフィスでチケット配布なので、まあ2,3時間は並びます。私は例年のことなので、ビーチ用の折りたたみチェアを左手に、冷たい麦茶やサンドイッチなどしっかりクーラーボックスに詰め、お気に入りの読みかけの本「現代の傭兵たち」*(この本がまたとても興味深い。アメリカに住んでいるからもちろんですが、この本の訳者が、私の高校時代からの親友の一人、角敦子氏ときてる。)とiPodを持ち、さて行ってきました。
この夏2本目はシェイクスピアではないものの、60年代に大ブレイクしたアメリカのミュージカル、「ヘアー」。「アクエリアス」や「レット・ザ・サンシャイン・イン」などの名曲でご存じの方も多いのではないでしょうか。ベトナム戦争反対(当時のアメリカは徴兵制度)、人種差別反対、性や髪型、若者の生活の自由などを唱える当時ヒッピー(フラワー・チルドレン)と呼ばれた、若者たちのストーリーです。彼らが訴えている戦争反対、人種差別撤廃など、40年以上たっても我々がやっていることは同じで・・・・ とても心に響くミュージカルでした。脚本も音楽も、ずいぶん原作に忠実だったようです。フィナーレの最後にギンギンのロックンロールで、出演者の若者たちだけでなくステージに駆け上がった観客も、ところ狭しと踊りまくり、盛り上がりきって終了しました。
*「現代の傭兵たち」ドキュメント 原作/ロバート・ヤング・ベルトン、訳/角敦子 原書房 ¥2200
原作者が命がけで現地へ赴き、弾丸をかいくぐって集めた情報やインタビューにより書かれたフィクション。現代の「戦争」がもはや国のメンツだけでなく、立派な巨万の富を築くための事業へ成りつつある経過を、数々の状況下においてまとめ上げた本。SFの原作のような目を見張る発展もあり、なんともページをめくる手が緊張でふるえる。またこの翻訳が、今までかずかずの名訳と言われた角敦子。彼女の訳で、あらゆる情景が、目の前にまざまざと焼き付く。
訳者曰く、「特殊部隊はエリート中のエリートと言われる精鋭の兵士。彼らは、ハイテク兵器の扱いや航空支援の誘導、一般兵の訓練などを主に行う。その超エリートが除隊すると、警備会社あたりに勤めて低所得の生活を強いられる。そういった宝の持ち腐れになっていた優秀な人材を集めたのが、ブラックウォーターのような民間警備会社。そして、彼らの派遣先はイラク。軽装甲の車両ぐらいだったら、武装勢力の即席爆弾で吹っ飛ばされてしまう。そんな環境で命がけの任務を遂行しているのに、軍やCPA、民間軍事会社のいい加減な部分があだになって、民間警備要員のみならず、イラクの民間人の命も奪われている。」感情移入をするわけにはいかぬが、そしてトップは巨万の富を築いている、アメリカの実態。
また、彼女曰く、この本は本筋もさることながら、日本語に訳す上でエピソードがかなり面白かったので、その味をなんとか出せないかと、苦労を重ねたそう。
「血の吹きだす傷口の中に指を突っこんで、血管をつまんで止血する、」とか。
「とうとうそのクビはもげてしまった・・・」などなど。 ぶるぶる。ようこそ、21世紀のイラクへ。今、世界の実態を知っておくのもいいかもしれない。
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